「安心のお寺診断」の誕生秘話(後編)

井出 悦郎

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(前編からの続き)

「安心のお寺診断」は強みを軸としたお寺づくりを後押しするもの
環境変化の速い時代においては、お寺の個性や強みを前向きに伸ばし、持続的な発展につなげていくことが大切になります。強みに根ざして時流に適応していくと、変化のまっただ中で自らを見失いにくくなることに加え、受け手から見た時のお寺の特長が分かりやすくなることが挙げられます。

言い方を換えれば、独自の個性や強みを伸ばしていくお寺づくりによって、受け手に選ばれるお寺に発展していくことができます。
その上で、「安心のお寺診断」は自坊の個性を理解し、強みを発見することに役立ちます。何も目安がなく、強みを発見することはとても手間と時間がかかります。その点、「安心のお寺診断」を活用いただくことで、お寺づくりにおいて、圧倒的に時間と労力を削減できるメリットがあります。

安心のお寺10ヶ条に基づいて設定された100を超える質問に答えていただくと、いわば自坊の健康状態が数値とともにレーダーチャートで可視化され、自坊の特長をすぐに理解することが可能になります。

【安心のお寺診断のスコア結果イメージ】
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自坊らしいデコボコの形を見つけることが大切
「安心のお寺診断」は自己診断のため、数値の大小は実施する人の個性の影響を受けます。厳しめに答えれば数値は低くなり、甘めに答えれば数値は大きくなります。したがって、平均値との乖離はあくまでも参考数値として捉え、あまり気にする必要はありません。
「安心のお寺診断」においては、点数の絶対値よりもレーダーチャートの凹凸が重要となります。凸凹の形、つまりデコボコが生じている領域とその程度が、お寺の個性を表している点に着目することが大切です。

その際は、レーダーチャートのデコボコの形が、住職をはじめとした回答者本人が自坊に対してふだん抱いているイメージと合っているかについて確認いただきたいです。

その上で気をつける点としては、数値の低い領域を改善して、平均的でバランスの取れたお寺のかたちに近づいていくことが、「安心の診断」の究極的な狙いではないということに留意が必要です。
当然、あまりにも数値が低い領域があれば、必要最低限の水準までの改善を図らないと、本来は温まるご縁も温まらないということにもなりかねません。

ただ、できていない領域や苦手な領域を一生懸命に改善しても、強みにはつながりにくいかもしれず、弱みの改善にかける労力を、強みをより伸ばすことに使っていただきたいというのが「安心の診断」の趣旨です。
数値が低い領域があっても良いではないか、それよりも自分のお寺ならではの他では味わえない良さはこの点なんだと、明るく前向きに開き直ることが、これからのお寺づくりです。

自坊はどのような個性的なデコボコを目指すのかという点を、ぜひ多くのお寺に前向きに考えていただきたいです。

「安心のお寺診断」から見える全体傾向をレポートとして発信予定
現在までに、数十ヶ寺のお寺が「安心のお寺診断」に取り組んでいただきました。その平均値の傾向を見ると概ね60点(100点満点)くらいとなっていますが、第4条「充実したエンディングサポート」や、第6条「活発なお寺コミュニティ」の項目が50点強と相対的に低くなっている傾向があります。

今後も回答する寺院によって平均値は変化していくでしょうが、この二点については、時代の流れとして求められている終活のあり方に対応できる体制が整っていないことや、檀信徒をはじめとしたお寺コミュニティが従来の形から変化をしている真っ最中であることが示されていると捉えられます。今後、「安心のお寺診断」に取り組むお寺の数が増えるほど、お寺の全体的な傾向が表れてくると思いますし、時折全体傾向から見える必要な取り組みなどについてもレポートとして公開していく予定です。

「安心のお寺診断」のウェブ診断は無償でできます。ぜひ多くのお寺が診断ページにアクセスして、自坊の強みを発見していただき、お寺の持続的発展につなげていただきたいと思います。

(終わり)
安心のお寺10ヶ条の概要 →https://oteranomirai.or.jp/anshin
安心のお寺診断へのリンク →https://diag.oteranomirai.or.jp/temple/
前編はこちらから →https://oteranomirai.or.jp/reports/diag_hiwa1

井出 悦郎

(一社)お寺の未来 代表理事。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、2012年に(一社)お寺の未来を創業

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