【お寺を守るための会計】
井出:
阿弥陀院で、独自の会計の取り組みはされていますか?
河村:
自分の代になって、より会計をしっかりやるようになり、役員さんたちに会計を公開するようにしました。剰余金がそれほどないということを役員さんたちと共有すると、「じゃぁ俺らが草刈りやってやるべ」と、檀家さんがお寺の掃除を手伝ってくれるようになりました。それによって浮くお金はそれほど多くはありませんが、みんなで協力する文化が生まれたことがとても価値があると感じています。
また、本堂と庫裡の保険にはちゃんと入るようにしました。評価額の一部ではなく、全額に対して保険に入るように変えました。焼失した時に寄付を募ることを考えれば、年間の多少の負担増を選択することが賢明と考えました。
井出:
今まで照円さんが支援した中で、良い変化をしたお寺の事例はありますか?
河村:
会計をきっちりやることで無駄が減った事例があります。交際費を使いすぎているということに、ある住職は年間の数字を見てびっくりして、改めるようになりました。そのお寺は本堂を建て替えましたが、毎年余剰金が目減りしていっていたのが、ちゃんと貯蓄を出来るようになりました。
将来に対してぼんやりと考えていたものが、毎年数字がしっかり見えてくることで、将来に向けて資金繰りをどうするかということを考えるようになりました。本堂建替えに向けて貯蓄が必要なため、毎年経費を削っていくようになりました。交際費だけではなく、旅費交通費も減りました。日帰りで行けるところは日帰りで行こうと。それによって余分な宿泊をしないでよくなりますし。
昔からお寺の運営資金に自分のお金を入れる住職は多かったですが、それを帳簿にきっちりつけていないところもありました。お寺に貸していたお金を給料で返してもらうのではなく、借入負債として処理することで、同じ金額をもらいながらも余計な税金を払うのを減らしました。それもトータルで見ればお寺に資金を残すということにつながると思います。
【「お寺の未来を開くための会計」という意識】
井出:
これからのお寺における会計のあり方や、気を付けるべきポイント等はどのようにお考えですか?
河村:
意識が大切です。
どこを向いて会計をするのか、という意識です。
「やらないと税務署に目をつけられる」というのではなく、お寺の未来のための前向きな会計として捉えてほしいです。
そもそもお坊さんは会計ではなく、教化活動に時間を割いてほしいとは思いますが、現実は各寺院の独立採算制で、なかなかそうはいきません。
維持すること、存続させることというのがお寺にとっての重要なテーマです。
お寺を永続させるためにはきちんとした運営になっていないといけない。
それがお寺を取り巻く檀家さんにも喜ばれることにつながるはずです。
お寺の今後を考えるにあたり、会計数値のデータは檀信徒との良いコミュニケーションツールになります。
役員さんと数字を共有することで、色々なアイデアが生まれてきます。実体験をともなってそう思います。
また、信頼という点が大きいと思います。
お坊さんは金を貯めこんで…という世間からの疑いの目は残念ながらあります。
それを払拭するためにも会計データは役立つと思います。
震災があってから社会的に絆が叫ばれるようになり、お寺が地域コミュニティを作りやすい雰囲気が出てきました。
集まって何かをするのはよいことですが、そのコミュニティが続いていくにはお金が必要です。
お金を集めるということは、その主体に信頼性と透明性が必要になりますので、今後の寺院のコミュニティ活性化を考えるなら、どのような取り組みを行なうかということとセットで、会計の適正化は不可欠だと思います。
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