税務調査の注意ポイント②:支出編(河村照円税理士インタビュー)

河村照円

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多くのお寺の顧問税理士も務められ、阿弥陀院 住職でもある河村照円さんに、最近の税務調査の動向についておうかがいしました。
後編は支出面に関することをおうかがいします。
(※前編はこちら

源泉税が特に気をつけるべきポイント

ー 支出面でもっとも気をつける点はどのようなものでしょうか?

源泉税かかるかかからないかですね。イベントをやっているお寺は特に気を付けましょう。法話会、音楽会、落語会はつっつかれやすいです。最初の質問でどんな行事をやっているんですか?と聞かれます。

次に家計が混じっていないかを見られます。電気代や水道代など、お寺の経費と生活費が混在するような支出は、境界線を厳密に区分することが難しい場合、合理的な基準によって按分をしていきます。
たとえば電気代であれば床面積の割合で按分する、水道代は一般的な家庭の平均額を使用し、それを超えた分をお寺の経費にする、などのように客観的な按分割合の基準があるとより説得力をもって主張をすることができます。

ー 交際費はどうなのでしょうか?

交際費は額が小さければあまり問題にはなりません。
事業関連性が説明できるのであれば良いのですが、キャバクラは難しいですね。企業でも、例えば「不動産の契約に必要だった」と主張し、その契約書を用意しておくといった対策が考えられますが、認められるとは限りません。
ある寺院では、キャバクラの領収書が争点になりました。先輩としての立場上、全国から集まってきている後輩の慰労のため、キャバクラに連れて行かなければいけなかったと、様々な理由を述べ、半分認めてもらえたこともありました。でも、まれなケースでしょう。
必ずやっておくべきは、領収書に相手の名前と所属を書いておき、「この会社のこの人と行った」ということを記録しておきましょう。

災害関係の寄付について、税務署は指摘しにくい傾向がある

ー 税務署があまり見てこないのはどういうものですか?

税務署は災害には弱い傾向がありますね。お寺の場合は、被災地への寄付はあまり言いません。災害なのに課税するのかという批判を恐れています。もちろん、災害の事実認定は必要ですが。

ー お寺は寄付をすることも多いですが、気を付ける点はありますか?

付き合い上、政治団体への寄付をすることがありますが、その場合はお寺からではなく個人で支出しましょう。

また、住職がお寺に寄付することがあります。兼業の場合、兼業先の給与からお寺に修繕費などとして寄付することがありますが、それは問題ありません。
別のケースとして、住職が余命宣告を受けている中、本堂を立て替えたいという話があったお寺があります。個人資産をそこそこ持つ住職で、このお金を使って本堂を建て替えたいと1億円を寄付されました。そのまま死んでいたら1億円が相続税の対象になります。税務署から見ると、亡くなる直前にお寺に財産を移し替えたと見ます。租税回避のために相続税を回避すると、課税できるのです。したがって、今までの経緯や役員の話をふまえて書面と残しておきました。総代会、責任役員会の議事録を残しておくことが大切です。調査官も上司に説明しないといけないので、書面コピーを取って、提出することが重要です。

全ての情報開示が必要ではなく、必要な情報のみ開示することが大切

ー 税務調査でその他に気を付ける点はありますか?

個人通帳は見られると思ったほうが良いですね。なので、お寺との資金のやり取りや、現金入金などの場合は説明できるようにしておきましょう。

PCを見せてくださいと言われても、税務署の権限外のものもあります。メールもその一つですね。その場合は、必要なものがあれば言ってください、お渡ししますので、と回答することが適切です。全てのメールを見せるのではなく、部分開示しましょう。
基本的には、全て住職の同意の下の調査権限ですから、何でもかんでも全て見せる必要はありません。一つひとつ方針を固めて、慎重に対応しましょう。
それと、人の良い住職は、税務署に聞かれていないことも答えてしまったりします。なので、聞かれていないことには答えず、あくまでも聞かれたことのみに丁寧に答えましょう。

ー 貴重なお話しをありがとうございました。日々の動きを適切に帳簿に記録し、税務調査には人と人との関係として誠実に対応することが大切ということですね。税務調査に限らず、基本的なことを教えていただいたと思います。ありがとうございました。

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河村照円

税理士・行政書士の資格を持つ住職。24歳の時に父である先代住職が亡くなり、相続を経験する。現在はその経験から相続にまつわる相談を多く受けている。読経の声が良い、話を親身に聞いてくれる、などの評判。

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