「お寺のための安心会計」著者・河村照円さんにインタビュー (前編) :お寺の税務調査をきかっけに、住職 兼 税理士になる!

井出 悦郎

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書籍「お寺のための安心会計」。
著者の河村照円さんに、これからのお寺に求められる会計について、お寺の未来の井出悦郎がたずねました。
河村さんの極意、「お寺の未来を開くための会計」とは・・・?前・中・後編にわたってお届けします!

【お寺の税務調査をきかっけに、住職 兼 税理士になる】
井出:
お寺で会計・税務が重要と思ったきっかけは何だったのですか?

河村:
きっかけは中学3年生の時に、祖父のお寺に入った税務調査です。当時はほとんどのお寺が帳簿をつけておらず、源泉所得税もちゃんと納めていませんでした。あの頃、全国で一斉に税務調査が入り、お寺の給料に対してもメスが入ったようです。祖父のお寺では、税金を何も納めていなかったので、お寺の全収入から全支出を除いたものを全て住職への給料として見なされてしまい、きちんとやっていれば納めなくてもよい税金を払うことになりました。
祖父は公務員と兼業で、むしろお寺を維持するために公務員のお給料をお寺に入れていたくらいでした。にもかかわらず、余分な税金を払わなければならなかった。7年間にわたってさかのぼられ、加算税とペナルティの延滞税を払いました。金額は具体的には分かりませんが、おそらく百万円単位では支払ったと思います。私は小さい頃から算盤をやっていたこともあり、計算をする仕事なら向いているかもと思い、この出来事がきっかけで税理士を志しました。
大学卒業後の本山での修行を終えて、晴れて税理士となりました。ほぼ同時に父が亡くなり、お寺を継いで阿弥陀院の住職となりました。お寺の会計にも父が亡くなってからたずさわるようになりました。

井出:
最初にお寺の帳簿を見た時の感想は、どのようなものでしたか?

河村:
「よくこの収入でお寺をやれていたなぁ」と感じました。そして、これから自分が頑張らないといけないという思いも同時に湧いてきました。

【檀家さんとの関係づくり】
井出:
住職になった当時、檀家さんとの関係はどのようなものでしたか?

河村:
住職になってから、檀家さんとの関係づくりを心がけ、総代さんともよく話すようにしました。総代さんには「みんながお茶を飲みに来てくれるお寺にしたい」と話したら、ても賛同してくれて、そこから色々なイベントが生まれました。
50年ぶりに万灯会と、それに合わせた夏祭りが復活しました。施餓鬼と合わせてやることで、50名ぐらいの参加者だったのが200名くらいの人が来るようになり、下の世代にも幅が広がっています。一緒にお祭りを作っていくことによって、「みんなでやるぞ」という意識が檀家さんに芽生え、協力者が増えました。
檀家さんがお祭りの中で出し物をやるようにもなりました。大工さんが山から竹を切り出し、境内を竹灯篭でいっぱいにして、竹を使った流しソーメンをやったりとか。総代さん、世話人さん、実行委員会のみなさんが、一参加者ではなく、「みんなに楽しんでもらおう」という運営側としての意識が出ました。
この出来事がきっかけとなり、昔話や地域の伝説の探検イベントが生まれました。70、80歳のおじいさんたちが活躍するんです。地域に七つのお不動様がありまして、お年寄りはみんな「七不動」と呼んでいました。七不動という言葉を地域のみんなが聞いたことはあるけれども、七つ全て知っている人はごく少数。そこで、おじいさんたちがみんなを案内して、一つ一つのお不動様を説明するんです。そういうことをやっていると小学生も興味を持って参加してくれるようになり、地域の伝統が次世代に引き継がれていく効果を感じています。
お寺は地域のストーリーを引き継いでいるはずなので、その力を活かしていると思います。地元の次世代の役に立っているという実感のあるお年寄りは、とても輝いています。

中編につづく

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井出 悦郎

(一社)お寺の未来 代表理事。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、2012年に(一社)お寺の未来を創業

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