葬儀・お墓に関する生活者調査より - Vol.1 葬儀編

井出 悦郎

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2018年9月に、「葬儀・お墓に関する生活者の意識調査」を行ないました。
これは、2016年12月実施の「寺院・僧侶に関する生活者の意識調査」の続編として、葬儀とお墓に対象を絞った深掘りの調査として行なったものです。

調査対象:全国の40-79歳の男女1,000名
調査時期:平成30年8-9月
調査手法:インターネット調査(無作為抽出)

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今回のレポートでは葬儀について見えたことをまとめます。

調査データの結果

葬儀が必要と考える人は7割強


男女にかかわらず、大多数の人が葬儀は必要と考えています。その意味合いとしては「けじめ」「見送り」「別れ」などといった、故人との節目的感覚を感じている人が多数でした。

葬儀に「宗教性」が必要と考える人は約3割


葬儀においては、宗教的な意味が付与される必要性はそれほど感じられておらず、葬儀の必要性と比べると約▲4割のギャップとなりました。特に女性ほど、宗教性を必要としない傾向が出ました。

葬儀の演出が記憶に残らない人が約7割


葬儀の演出においては、約7割の人が今までの葬儀で記憶に残るものがないという認識が示されています。

半日から1日程度の葬儀を望む人が約5割


約5割の人が半日から1日程度の葬儀を望んでおり、葬儀の短縮化傾向がうかがえます。

葬儀費用を抑えたい人は約9割


葬儀の費用は抑えたい(「納得しながら費用は抑えたい」+「とにかく費用を抑えたい」)という人が約9割にのぼり、葬儀費用に対する目線の厳しさがうかがえます。

調査結果から見えること

儀礼に「節目」の意味合いが感じられ、納得感を高める事前コミュニケーション

葬儀は「節目」として執り行う意味合いが最重要。宗教性は必要がないという認識が多く示されているが、葬儀では「伝統的な型」をふまえる意向の人が多いことから、受け手が節目と感じられる葬儀儀礼であれば、受け入れてくれる余地があります。
杓子定規に宗教性を前面に出すよりも、受け手の目線に立って、受け手が意味のある節目だと感じられる儀礼執行が重要となるでしょう。
そのためには、事前に儀礼の意味について受け手となる施主側が納得している必要があり、丁寧なコミュニケーションの機会が重要となります。葬儀にかかわらず、お寺が親身に終活相談に応じていくことは、これからの時代に不可欠な取り組みと言えるのではないでしょうか。

本質が担保された、葬儀の「意味ある」簡素化

葬儀の演出的要素が記憶に残らないということは、葬儀価格の上昇を招く過剰な演出は、施主や参列者にとって付加価値にはつながりにくいと考えられます。葬儀の短縮化とあいまって、施主側の意向で簡素化・質素化は進むことになるでしょう。
ただ、一方でどこまで簡素化して良いのか、多くの生活者には判断軸がありません。その判断軸を持っているのはお寺です。
お寺が「これがあれば葬儀は大丈夫」というところまで葬儀に必要な要素を削ぎ落とし、檀信徒や生活者にとって納得感のある経済性で、葬儀を推奨していくということが求められるでしょう。
そして、その方向性を追求していくと、お寺での葬儀にも取り組んでいく必要が出てきますし、その結果として前向きな形で、お寺からの葬儀の価格破壊も起こっていく時代になるのかもしれません。

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井出 悦郎

(一社)お寺の未来 代表理事。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、2012年に(一社)お寺の未来を創業

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