『まいてら』の歩む道

井出 悦郎

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「まいてらは何を目指しているのですか?」

色々なお寺とお会いする機会に、よくご質問をいただきます。
多くのお寺が、寺院運営について試行錯誤の中、まいてらにもご興味を寄せていただいていると感じます。

まず、まいてらという存在は、お寺の未来の使命そのものです。

一人ひとりが良きお寺と出会うご縁を育み、あなたの安心に満ちた日々の歩みを支えます

この使命に基づき、お寺の思いと生活者の思いをつなぐ結節点となり、お寺と生活者が自由に出会う社会インフラの一つとして発展していくことが、まいてらが長期的に目指す将来像です。

ただ、その将来像を実現することは簡単ではありません。
まずは、お寺を取り巻く時代環境をしっかりと認識する必要があります。

今まで蓄積してきた分析データや、全国のお寺の現場実態や檀信徒との触れ合いを通じて、以上のような時代環境にお寺は位置していると考えます。
時代環境に対応した取り組みを展開するために、まいてらは次の3点を運営方針に据えています。

  • 現代人に伝わる「祈り・供養(弔い)」
  • 個別性の時代に対応した知恵のインフラ
  • 「面」として仏縁を耕す連帯関係(非囲い込み発想)

1.現代人に伝わる「祈り・供養(弔い)」

「祈り・供養(弔い)」はお寺の根幹です。
「まいてら」の中心軸には「祈り・供養(弔い)」をしっかり据えていきたいという思いがあります。
祈りについての思いは、以前の論考「お寺の未来のこれから」でも述べさせていただきました。

お寺の未来は、様々なお寺から相談を受けますが、その中で感じていることは、

「祈り・供養(弔い)」の本質は変える必要はない。しかし、その良さを現代人に届けるには様々な工夫とチャレンジが必要

というものです。
しかし、次世代に相続していく責務があるお寺には、新たなチャレンジが、道を踏み外すことへの恐れがあります。
特に「祈り・供養(弔い)」というお寺の根幹においてはなおさら難しい。それは檀家寺も祈祷寺も同じです。

まいてら寺院が、現代人に伝わる「祈り・供養(弔い)」に挑戦し続けるコミュニティであってほしい。
そのためには、挑戦を支えあい、相互の刺激を通じて気づきと振り返りにもつながりうる、信頼のコミュニティを築いていくことが重要だと考えています。
各地域で1年に1-2回開いている「まいてら寺院の集い」は、相互の取り組みについて知恵を出し合うとともに、各寺院の立ち位置を確認することを大切にしています。
その交流を通じて、現代人に伝わる「祈り・供養(弔い)」の新たな取り組みが生まれてくるかもしれません。

2.個別性の時代に対応した知恵のインフラ

檀信徒をはじめとした生活者が多様化し、要望も個別化します。そうなると、寺院のあり方や具体的な取り組みも、目の前のご縁に対応していく個別最適化が強まります。
それぞれのお寺には、それぞれに巡るご縁がありますし、個別最適化が進展する時代においては、さらにその巡りは強まるでしょう。

したがって、寺院全体の共通施策を展開するよりは、まいてら寺院が何かに取り組みたいと思った時に、その機縁をサポートするためのインフラを整備していこうと考えています。「おてら終活カフェ」はその一つです。
それ以外にも可能な範囲で、テーマに応じた様々な専門家をまいてら寺院に紹介しています。

一方で、個別最適のみが進展しては、学びあいが難しくなります。
学びあいを実現するには、個別具体的な事実・事象を俯瞰的な視点で抽象化し、他寺院でも活用可能な普遍的な知恵として昇華する必要があります。
この点は、まさにお寺の未来の得意とするところです。全国のお寺の様々な活動を観察しながら、状況に応じて知恵として昇華し、まいてら寺院に還元していきます。

3.「面」として仏縁を耕す連帯関係(「非」囲い込み発想)

地域密着の檀家寺は、地域のかかりつけ医のような存在です。かかりつけ医は日常の相談に親身に応じながら、テーマによっては専門医を紹介します。
お寺で言えば、相手の方の状況によっては他宗派も含めた他寺院を紹介したり、お寺とご縁のある様々な専門家を紹介したりすることと言えます。

そもそもお寺はご縁の大海で成り立ってきた存在ですし、これからは檀家制度の名残りの囲い込み発想とは距離を置く必要があります。ご縁は仏智の領域ですから、お寺が人知によってご縁をつなぎとめるのも限界があります。
半永久的に囲い込まれることが嫌だから、お寺離れという現象も起きているのであって、この自由社会において囲い込み発想は困難でしょう。「わが寺の檀家」「わが寺の門徒」という考え方は旧世紀の遺物です。

生活者がどこかのお寺にアクセスしたら、ご縁がよどみなくスースーと流れ、そのご縁の最適な場所におさまる。
おさまりどころは窓口となった寺院かもしれませんし、それ以外のお寺かもしれません。それは仏さまのみぞ知るところ。
大切なことは、一ヶ寺で囲い込もうとせず、有志のお寺が連携して仏縁を耕そうという姿勢です。
宗派や先祖代々というつながりは一定の存在感は持ち続けますが、それに制約されない方も増えていきます。
点ではなく、お寺が連帯して仏縁を広げていく「面」となることが何よりも大切な時代ではないでしょうか。

そして、それはまいてら寺院だけが「面」となるわけではなくて、まいてら寺院には良きお寺とのご縁もたくさん広がっており、その意味合いでの「面」です。
ただ、受け手たる生活者からは、情報が可視化されているまいてら寺院が「面」として見えるでしょうから、まいてら寺院が最初のきっかけの窓口となる可能性は高いかもしれません。
仏縁が広くスースーと流れていくきっかけにまいてら寺院がなればとても喜ばしいことですし、それはまいてらを立ち上げた願いでもあります。

以上の3点が、まいてらを運営する上で大切にしている方針です。
実現できていないことも多いですが、時間をかけながら少しずつ整えていきます。

また、実際にまいてらを知りたい・触れたいというお寺からの声も少なくないため、これからは「まいてらオープンセミナー」という試みを始めます。
各地のまいてら寺院を学びの舞台に、お寺の取り組みを深く学ぶ場です。そして、各寺院の個別性のみにとどめず、寺院運営を広く見るお寺の未来の視点から、個別性を超えた普遍的な知恵を、示唆としてご提供していきます。
檀信徒や地域社会のために、より良い寺院運営を志す方であればどなたでもご参加できます。ぜひふるってご参加ください。

お寺とともに歩むことの一番の責務は、「続く」ことだと強く感じます。年々その思いが強まっています。
まいてらも「続く」存在になりたい。
そのためにも、3つの運営方針を大切にして一歩ずつ進んでいきます。

井出 悦郎

(一社)お寺の未来 代表理事。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、2012年に(一社)お寺の未来を創業

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