2018年9月に「葬儀・お墓に関する生活者の意識調査」を行ないました。
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今回はお墓についてのレポートです。
(Vol.1 葬儀編はこちら)
調査データの結果
4割強の人がお墓について生前に考えている
4割強の人が生前にお墓について考えています。有意な男女差はなく、年齢が高くなると検討する人が増える傾向にあります。
また、葬儀の事前検討をした人のうち8割がお墓を生前に検討しています。逆に葬儀の事前検討をしていない人のうち8割が、お墓も事前に検討していません。
お墓選びで重視するポイントは男女で異なる
お墓選びはアクセスが最も重視されていますが、男女に傾向の違いがありました。
男性は「1.先祖代々→2.アクセス→3.管理料」の順に重視されていますが、女性は「1.アクセス→2.管理料→3.先祖代々」の順に重視されています。
また、高齢の女性ほどアクセスを重視する比率が上昇しました。
「墓じまい」「お墓の引っ越し」は、可能性のある・なしの比率が拮抗
家族のお墓について、「墓じまい」「お墓の引っ越し」等の可能性がある人と、ない人の比率が拮抗しています。
一方で分からないという人は、40代は5割強、50代は4割強。60代も4割弱にのぼり、それらの人が今後どのような判断をしていくかが大勢に影響を与えるでしょう。
先祖代々のお墓・納骨堂を選ぶ人は3割強
先祖代々のお墓・納骨堂を選ぶ人は3割強でした。
樹木葬と海洋散骨が一定の存在感を示し、女性ほど比率が高い傾向にありました。全体的な傾向からも、女性は男性と比べて家族のお墓から離れたがっている傾向が見えました。
墓じまい情報について興味を持つ人は3割
墓じまいの情報は、3割程度の人が興味を持っています。
調査結果から見えること
お墓は家族から個人の物語へ。「個人化」と「つながり」がバランスしたお墓へ
先祖代々のお墓を選ぶ人が多数派ですが、3割強に止まりました。先祖代々のお墓が最も選ばれる時代はしばらく続くでしょうが、選択肢は分散し、将来的には先祖代々のお墓が、数値で見ても他の選択肢とフラットな位置付けになっていくと考えられます。
それは、お墓に眠る物語が、家族から個人化していくということでもあります。今まではお参りする人が先祖代々の家族の物語を持ってお墓参りにきてくれましたが、これからはお墓参りの物語も多様化します。
家族の物語だったとしても、先祖代々とは離れて、夫婦だけで入るお墓や納骨堂を選ぶ人も増えるでしょう。また、自然葬や合葬墓を選ぶ人はそもそもが先祖代々とは切り離されます。
ただ、先祖代々の家族とは離れたとしても、多くの人に共通するのは「誰かとのつながりは保ちたい」という思いだと思います。それぞれの境遇や好みに合う形で、個人化しながらも人(家族・友人等)とのつながりはあるという適度なバランスが、これからのお墓では好まれていくと考えられます。
自然葬が一定の存在感。今後も自然志向は高まっていくか
本調査では、死後は「自然の一部に還る」と答える人が約3割を占めました(データは割愛)。そして、樹木葬・散骨等の自然葬を希望する人も約2割を占めています。
従来は、地域によってはある程度年数が経った段階で、家族のお墓の周辺や直下の穴に散骨をしたりして、少しずつ緩やかに自然に還していくやり方を取っていました。気持ちの整理ができたからこそ、そのような還し方ができるということでもあります。
一方、近年の自然葬は即座に自然に還っていく方式を選んでいるとも言えます。
ただ、即座であることは不可逆も意味します。人の気持ちは天気のように移ろうため、後で後悔しないためにも、一時の流行に流されず、確かな情報と丁寧な検討が必要とも言えるでしょう。
客観的な助言も得ながら、お墓について冷静にゆっくり考える場が必要
近年叫ばれている墓じまいですが、興味を持つ人は3割程度でした。お墓の移動の可能性がある人が約3割であることを考えると、ほぼ符号します。
お墓について考える必要性を感じているからこそ、情報に興味があるわけです。墓じまいの情報は需要を喚起するというよりも、必要性に対して応える種類の情報と言えます。改葬が年間10万件を超えて増加傾向にあり、これからもそれらの情報の必要性は高まっていくでしょう。
一方で、世の中に情報はたくさん氾濫しても、その情報を取捨選択し、お墓について冷静にゆっくり考えることができる場や機会は十分とは言えません。そして、どこに行ったら適切な相談相手がいるのかも分かりません。
最近、まいてら寺院が取り組んでいる『おてら終活カフェ』は、このような時代状況に応える取り組みとして始まりました。リラックスした雰囲気の中で、お墓をはじめとした終活にまつわる様々なテーマについてゆったり考える場です。地域に根差したお寺らしい、古くて新しい取り組みと言えるでしょう。
(参考記事:お墓の現在とこれから)