新型コロナウイルスの影響で、お寺にも様々な影響が出ています。
そして、この影響は一過性にとどまらず、仏事の形を大きく変えていくことが考えられます。
考えるだけでも色々あります。
・檀信徒にとっては、ずっと続いてきた月参りを止める、相応しいきっかけとなる
・三・七・十三回忌等、一周忌以降の重要な節目にあたる法事の日程調整ができず、そのまま行なわれずに終わり、以降の回忌そのものが行なわれなくなる
・葬儀の小規模化と短縮化(半日から一日)が定番となり、しっかり二日の通夜・葬儀を行うかが選択的となる
多少極端に書いていますが、程度の差こそあれ、潜在してきた様々な変化の種が、今回の新型コロナウイルスという契機によっていよいよ変化が具現化し、新たな定番として固定化していく現実が訪れるかもしれません。
足元の価値を再認識することが大切
では、どうするか。
焦って動き出したくなる気持ちもこみあげてくるでしょうが、単に動くだけでなく、思考も働かせることをおすすめします。
特に危機の際は、足元をしっかり見据えることが大切です。
新型コロナウイルスの影響が強まる以前からも、お寺の未来には寺院より様々な相談が寄せられます。
その際に、大切にしていることは、お寺がどのような価値によって支えられているのかをしっかりと把握していただくことです。そこで、おススメする分析は「無形の価値の棚卸し」です。
お寺には伽藍やお金など、誰が見ても分かりやすい資産以外にも、目に見えない資産(=無形の価値)が蓄えられています。その目に見えない無形の価値は、日常的には空気のような存在で意識されにくいですが、お寺の日々の営みを根底で支えてくれています。無形の価値は、木に例えると根っこ。根っこがあるからこそ、葉が生い茂り、豊かな果実が実ります。
一般的に、歴史の長い組織ほど根っこである無形の価値は豊かであり、数百年にわたってつながれてきたお寺は豊かな根っこを張り巡らせているはずです。
長い間に育まれてきた無形の価値は、当然しがらみと密接に関連する側面もありますが、それ以上に余りある良い影響をお寺に及ぼしています。
特に現在のような緊急事態においては、お寺を日々支えている足元の価値を再認識し、その価値に対する感謝とともに、「どうしたらその価値を維持し、さらに育むことができるか」という現実的なアイデアを具体化していくことが大切です。
アイデアを具体化していく手始めに、お寺の未来が使用している「無形の価値の棚卸し」ワークシートを以下からダウンロードできますので、ご自由にお使いください。
無形の価値分析で、今必要なアクションを具体化する
ダウンロードした「無形の価値の棚卸し」ワークシートを活用し、以下のステップを参考にして、今必要なアクションを具体化してみましょう。
【STEP1:無形の価値の棚卸し】
ワークシートを使い、思いつくものをできる限りたくさん書き込みましょう。何が正しい、正しくないということはありませんので、とにかくたくさん具体的に書き込むことが大切です。
そして、弱み・課題に目を向けるよりも、強みをたくさん書き出すことに重点を置きましょう。強みが可視化されると、安心感と自信につながります。(ワークシートも意識的に強みの欄のスペースを大きくしています)
また、可能であれば寺族にも意見を聞き、多面的に強みを深掘りしましょう。
【STEP2:無形の価値の優先順位付け】
無形の価値を可視化した後、現在において特に気配りが必要な無形の価値を、赤線等で囲みましょう。たくさん印をつけると優先順位をつけられなくなるので、できれば3つ程度、多くても5つにとどめましょう。
【STEP3:無形の価値を強めるアクションの具体化】
STEP2で導き出された無形の価値に対して、現在何ができるのかアクションを考えましょう。
特に現在は関係性に関する無形の価値の重要性が高いと思われますので、以下のような問いを基にアクションを具体化していきましょう。
・当面の仏事のガイドラインを具体化する必要はないか?
・檀家さん宅への直接訪問は難しいが、インターネットで伝えられることはないか?その際、最低限の設備投資で始められることはないか?
・寺報という紙メディアや、映像(DVD等)を使って伝えられることはないか?
・一言でも良いので、電話で檀家さんへの気遣いを伝えることも検討する(一日10-20件でも)
・お寺と関係する業者も大変な時。窮状をヒアリングするとともに、何か一緒にできることはないか?
無形の価値とつながっているアクションは、お寺の長期的な基盤につながります。
考えても動かなければ単なる妄想ですし、動いても考えていなければ危うい結果となります。
焦る必要はありませんので、思考と行動を常に両輪として回しながら、「このアクションは、どの無形の価値を育むのか」ということを意識して、今できることを行動に移しましょう。
※無形の価値についてより詳しく知りたい方は、住職の教科書をご参照ください。